ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


本当ならその言葉を
俺が彼女に伝えてやりたかった

後ろめたさを感じることなく
まっさらなココロで
彼女にまっすぐに伝えてやりたかった


なぜ俺はそれができないんだろう?
なぜできなかったんだろう?


自分の置かれている環境のせい?
後輩医師を指導しなくてはならない立場のせい?
多忙を理由になかなか自宅に帰ることができない生活を変えられずに
伶菜達と一緒に過ごす時間が少なかったせい?

一時、兄妹という関係だったせい?
彼女の主治医という立場を自ら降りてしまったせい?




いろいろな言い訳を考え付いたけれど
そんなのは間接的な理由




本当の理由

それは

「・・・オレは・・・何ひとつ守りきれない自分が情けなく思うよ。」


俺自身の
伶菜を
伶菜だけを守り抜こうという覚悟が足りなかった

伶菜の学生時代から今まで
彼女のことを想い続け
ずっと心の中にあり続けた後悔に自ら立ち向かった目の前の男よりも
その覚悟が足りなかった


そういうことなんだろう・・・



森村という男

医師として
伶菜を想うひとりの男として
彼よりも自分は劣勢である


そう感じさせされた俺はこの時
伶菜がどうしたいかを確認することができないまま
自分を諦めてしまった。





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