ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


ただ、

「頼む、一刻も早く名古屋に戻ってくれ。」

と先を急ぐ理由が見えない。


「アイツを救い出せるのは、日詠、オマエだけだ。」

奥野さんという先輩医師も美咲と一緒に従事している筈だからだ。


なぜ俺じゃなきゃいけない?
なぜ、彼女を救い出せるのは、俺だけ?
奥野さんは俺が信頼している先輩なんだ
その奥野さんじゃダメなのか?

奥野さんの手が空いてなくても、
緊急で宅直医師を呼び出せる体勢は取ってあるはずだ

それなのになぜ?



『入江さん、俺・・・ようやく彼女と・・・』

「わかってる。」


美咲を助けなきゃいけない理由
それもちゃんとわかっていない状況で、そんなことを言われても、簡単には首を縦に振る事なんてできない

昨日の俺は伶菜の元彼氏である佐橋という男から奪い取ってでも、伶菜と一緒に居たいという想いを抑えられなかったからだ
その想いは今朝もなんら変わってなんかいない


『だから、俺は・・・』

「オマエが言いたいことは充分わかってる。」

『だったら・・・』


いつもの仕事中の俺は自分の手を求められたら、なるべく引き受ける・・・それをずっと心がけてきた
それと引き換えに自分の時間は皆無に等しかった
でも、今、仕事から解放されているこの状況での伶菜との時間を少しでも長く過ごしたい

それぐらいの些細な望みを叶えて欲しい

医師という職業人がそう思うのは
許されないことなのだろうか?

伶菜との時間を今すぐ手放すことよりも ”後悔すること”
そういうことが他にあるのだろうか?


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