強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
そんなイケメン幼馴染に見惚れていたせいで、牧師さんの言葉を聞き流してしまった。

「――誓いますか?」

誓いの言葉の返事を再度問い掛けられた私はハッと我に返る。

「は、はい。誓いましゅ」

慌てて返事をしたら噛んでしまった。

参列席からクスっと笑いが起きて、途端に恥ずかしさで顔が熱くなる。目の前の牧師さんも苦笑いしているし、隣の真夜からは呆れたような視線を向けられた。


そのまま式は指輪の交換へと移り、真夜から私へ、私から真夜へと順番に左手の薬指に指輪をはめた。


「では、誓いのキスを」


牧師さんの合図に合わせて、真夜の長くしなやかな指が私の顔を覆うベールをそっと持ち上げる。目が合い軽く微笑まれると、胸の鼓動がいっそう早まる。

ドキドキと高鳴る鼓動に追い打ちをかけるように、真夜の手が私の肩に乗り、反射的にビクッと肩が跳ねてしまった。

一方、目の前の真夜はとても冷静だ。

私の肩を軽く引き寄せると、背の低い私に合わせて高い背を屈ませる。少し傾けた顔がゆっくりと近づいてきて、私はきゅっと目を閉じた。



『明ね、真夜のことが好きだよ。だから、真夜のお嫁さんになりたい』



そういえば、人生で初めての告白をしたあの日も季節は春で、今日のように桜が咲いていた。

あのとき振られてしまった相手とまさかこうして結婚式を挙げているんだから、人生は何が起こるか分からない。

今となっては懐かしい子供の頃の記憶を思い出した瞬間、私の唇にそっと優しく真夜の唇が重なった――……


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