強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
別に俺も本気で明にそのブランドの腕時計が欲しいと頼んだわけじゃない。

ここで腕時計の話題を出したのはもっと他の目的があったからだ。

でも、どうやら明はそのことに気が付きそうにない。


俺は、首を横に振った。

「やっぱり腕時計はいらないよ。貸してるのが返ってくるの待ってるから」

俺が欲しいのはその腕時計だけ。


けれど、明は納得していないらしい。

「ううん。私、真夜の欲しいもの何でも買ってあげるって言ったから、腕時計を買ってプレゼントする」

「でも、明には高いだろ」

「高いけどお金を貯めるから」

そこまでしてプレゼントしてくれなくてもいいんだけど、明は、子供の頃から意地っ張りだからな。

きっと、自分から俺に欲しいものを聞いた以上、それを買わないと納得がいかないのだろう。


……困ったな。余計なことを言ってしまった。そこまでして明に腕時計をプレゼントされても――


「時間かかるかもしれないけど、私、約束通り真夜に腕時計をプレゼントするから。それまで待っていてくれる?」

真剣な眼差しでそう告げる明に、俺は思わず彼女の顔をじっと見つめた。


「……ああ、待ってるよ。いつまでも。明が俺に腕時計を返してくれるの」

「え、返す? 私は新しいのを買ってあげるって言ってるの」

「そうだったな。楽しみに待ってるよ」

そう告げると、明は満足そうに微笑んだ。


――まぁ、いいか。

腕時計を買うためのお金を貯めながら、もしかしたら明が思い出してくれる可能性もあるから……。


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