強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
それから明は、テーブルの上に置いたままのホールケーキにナイフを入れて切り分ける。

「プレゼントがない代わりに真夜のケーキ大きく切ってあげるからね。イチゴも三つ乗せてあげる」

明は、俺のお皿にケーキを乗せると、自分の分のイチゴも俺のケーキの上に乗せてくれた。

それからしばらく二人でケーキを食べていると、


「……ねぇ、真夜」


明が、最後に食べるために残しておいたイチゴをフォークに指しながら口を開く。

「なに?」

ケーキを食べる手を止めて聞き返したのに、明から言葉がなかなか戻ってこない。

「どうした?」

もう一度聞き返すけれど、「なんでもない」と明は頭を振った。


……またか。


車の中でも同じことがあったし、なんなら最近このパターンが多すぎる。俺は、フォークをテーブルへ置くとため息を吐いた。

「あのさ、明。俺に言いたいことがあるなら言ってくれないか。その態度すごく気になるだろ」

「……」

「ほら、早く言え」

少し強めの口調でそう促しても明は黙っていた。けれど、しばらくてしてから、フォークに指したままのイチゴをぱくっと口に入れると、それをもぐもぐと食べ終えて、ゆっくりと口を開く。

「真夜は、去年の誕生日はどんなふうに過ごしてたの」

「去年?」

確か、当時付き合っていた彼女と、彼女が予約したレストランでコース料理を食べながら過ごした記憶がある。

そのことを正直に話すと、「やっぱり彼女いたんだ……」と、ボソッと呟いた明が、軽くため息をこぼした。

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