ストロベリーキャンドル
終わりと始まりは突然に






人は誰しも、少なからず秘密を持っていると思う。


それが大なり小なり、千差万別であると思う。


だから当然、私も秘密を持っている。


「奏音、今日行ってもいいか?」


「はい。待っています」


私の所属する総務部の階の非常階段で、
私は葛城さんと一緒にいた。


葛城さんは、私の直属の上司。四つ上の先輩だ。
そんな先輩と、わざわざ非常階段なんて
滅多に使わない場所にいるということは、
言わずもがな分かってしまうでしょう。





そう、私の秘密とは、不倫。




葛城さんには、先月結婚したばかりの奥さんがいる。
私もこの前、結婚式に参加したばかり。


しかも、その結婚相手はなんと、
私の親友でもある七海。


親友の旦那さんとの不倫は、
誰にも言えない、私の秘密。


「じゃあ、またメールする」


「はい」


葛城さんは決まって、別れ際には私にキスをくれる。


唇を啄むような軽いキスだけれど、
私はそのキスが好きだった。


背徳感を感じられる、スリリングなキス。


バレてしまわないかとヒヤヒヤするのに、
やめられなかった。



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