ストロベリーキャンドル
失って手に入れたモノ





仁とお付き合いをスタートしてから半年が過ぎた。
最初は呼び捨てで呼ぶことも敬語を使わないということも、
全てが慣れないことの連続で戸惑ったりもしたけれど、
今ではだいぶマシになったと思う。



仁はスマートに物事を整理してくれる。
だから会社にもまだバレていない。


お互いの家を行ったり来たりしたり、
朝早くに会社に集合したりすることで、
二人きりの時間を取っている。


もうあの頃の私じゃない。
葛城さんに振り回されて悲しくて
泣いていた私はもういなかった。


「奏音。おはよう」


「七海、おはよう」


隣のデスクに座る七海に挨拶を返す。
七海も葛城さんと順調なようで、
いつも惚気話を聞かされていた。


でも、私にも新しい彼が出来たからなのか、
それに半年前のように嫌悪感を感じることはなく、
素直に聞くことが出来た。


最近ではもう、
葛城さんのことを聞いても大丈夫になってきている。


「それにしても、近頃奏音は綺麗になってきたわよね。
 彼氏でもいるの?裕也がしつこく聞いてくるのよ。
 あれは絶対男が出来ただろうって」


その話題にギクリとする。


葛城さんが私のことを気にしている?
それはまずいわ。今ここでバレてはダメよ。
私の幸せが、音を立てて崩れてしまうもの。


「彼氏なんていないって、葛城さんにも言っておいてよ。
 多分、ダイエットに成功したからかな?
 前と違って見えるのはそのせいよ」


「そう?奏音もそろそろいい人見つけなさいよ。
 結婚しないと、どんどん遅れるわよ」


「そうだね、結婚か……」


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