新妻はエリート外科医に愛されまくり
レイさんも、いつもの明るさを引っ込め、神妙な表情を浮かべる。
しゅんと肩を落とす二人に、私は焦って身を乗り出した。


「す、すみません！　私がちょっとナーバスになってるだけで……心配しないでください」


そう取り繕うと、颯斗がふっと目を細めた。


「うん。葉月には俺がついてるから、心配いらないよ。今はまだ、二人きりの生活を楽しむ……そういうことで、いいよな？」


どこまでも優しい瞳で問われ、私の胸にとてつもなく熱いものが湧いてくる。
『うん』と声に出して答えたかったけど、音にはならず頷くしかできなかった。


一瞬、それぞれを気遣うような沈黙が過ぎった、その時。


「あ～！　かがみん！　かがみん先生っ」


舌ったらずな甲高い声が、私たちの間のぎこちない空気を裂いた。
すぐに、「こらっ！　各務先生でしょっ」と、慌てたような声が続く。


「えっ……」


耳に届いたのが日本語だったから、私は反射的に顔を上げた。
呼ばれた颯斗が、「あ」と立ち上がる。


「浩太(こうた)！　よかった。今日は熱ないのか」


彼が足を向けた先に、小さな男の子を抱いた日本人女性が立っていた。
男の子は、見た感じ三歳くらい……？
私はそう見当をつけて、女性のそばに歩み寄った颯斗を見つめる。
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