新妻はエリート外科医に愛されまくり
親友とか両親とか、私に向けるのとは違う柔らかい笑みは、子供相手だからだろうか。
私は、彼のそんな慈愛に満ちた表情を、初めて見た。


「かがみ~ん! 抱っこ、抱っこ!」


よほど、颯斗に懐いているんだろう。
浩太君は母親の腕の中で身を捩り、せがむように両腕を伸ばした。
焦った母親が、「こら、浩太!」と窘めるけれど。


「はは。いいよ。おいで、浩太」


颯斗は気さくに応じて、母親の腕から浩太君を受け取った。


「わ~いっ!」

「もう……浩太ったら」


恐縮し切った母親をよそに、浩太君は大喜び。
まるで父親に甘えるように、颯斗に頬を擦りつけた。


「うわ、くすぐったっ……! こら、浩太」


意表を突かれた様子の颯斗も、明るく声を弾ませる。


「本当に、すみません。先生……」


母親が首を縮めて謝罪を繰り返しても、彼は穏やかな笑顔のまま。
気付くと、レイさんとメグさんも、目元を綻ばせて彼らを見守っていた。
浩太君を抱き上げる颯斗に、数ヵ月後の自分たちの姿を重ねているのかもしれない。


私も、本物の親子を、幸せな家族を見ているような錯覚を覚えた。
颯斗の瞳に滲む、子供への『愛情』を感じ取り、無意識に胸元を握りしめた。
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