夢の中の世界
起きてしまったことはもうどうしようもない。


時間を戻して事故が起こらなかったことにするなんて、架空の世界の出来事だ。


あたしも恵一も、起こってしまった事を抱えて生きていくしかないんだ。


「そんなに悲しそうな顔するなよ」


恵一がそっと近づいてあたしの頬にキスをした。


一瞬、なにが起こったのかわからなかった。


暖かくて柔らかな感触が頬にあって、すぐに恵一は離れて行ってしまったから。


キョトンとした表情で恵一を見ていると、その頬が徐々に赤くなっていった。


「あんまり見るなよ」


照れてそっぽを向く恵一に、今のは夢じゃないんだと理解した。


理解した瞬間、自分の顔がカッと熱くなるのを感じた。


互いに照れて真っ赤になって、言葉を失った時、ドアが開いてお母さんが戻って来た。


「あら恵一君こんにちは。どうしたの2人とも顔が真っ赤よ? 熱でもあるんじゃないの?」


お母さんは首を傾げて、そう言ったのだった。




END
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