手招きする闇
6 四階会議室 ホラーハウス
       
 いつものように教室の飾りつけ。
 ホラーハウスの教室の窓は一面、段ボールで塞がれていて、電気を消したら昼間でも真っ暗。
 作業を続けながらも、今日の話題は昨日の手招きする霊の話。

哲司「でも不思議だよな。あんな真っ暗な闇の中で、手招きする霊が見えたなんて」
俊樹「俺達には何にも見えなかったよな。手招きする霊というより闇って気がした」
哲司「うん、確かに何かの気配は感じたよな」
洋介「あれっ? 今日は彩萌静かじゃん。いつも、俺達が怖い話してたら止めてってうるさいのに」
       
 教室の端で段ボールに彩色している彩萌。
 彼女はどこか楽しげで、身体でリズムを取っているように見える。

哲司「あいつ、音楽聴いてるな?」
       
 制服のポケットからのびるイヤホンのコード。

哲司「道理で、怖がらないわけだ」
俊樹「でも、今日の持ち物検査によく引っかからなかったよな」
洋介「あっ、忘れてた。俺、デジカメ没収されてたんだった」
哲司「デジカメ? 何でそんなもん持って来たんだよ」
洋介「それがさ、今日の八時から中央公園でK‐POPのライブがあるんだよ。うちの母ちゃんが好きでさ、俺があの公園の中通って帰るの知ってるから、写真撮って来いっていうんだ」
俊樹「若けーな、お前の母ちゃん」
洋介「バカみてぇ」
俊樹「いいじゃん別に。それで元気でいられるなら。俺の母ちゃんなんか、ヘルパーの仕事でいつも年寄り相手にしてるから、すっかり老け込んでる」
哲司「あれっ? 理子は?」
俊樹「あいつ、また一年の教室に行ったんじゃ・・・」
哲司「まったく、今は学園祭の準備が優先だろうが」
俊樹「あいつには無理なんだよ。身体が勝手に動いてしまうんじゃない?」
洋介「ホントに理子は、怖い話に目が無いよな」
俊樹「でも、あいつ今朝言ってた。何か悲しい過去がありそうだって」
哲司「好きな女に振られて自殺とか?」
洋介「俺、振られても振られてもあきらめない性格だけどな」
俊樹「お前はバカなんだよ」
洋介「あー彩萌と付き合いてー」
哲司「お前、何回告りゃ気が済むんだよ」
洋介「う~ん。永遠に無理」
俊樹「お前くらいに、情熱的に人を好きになれたらいいよな。羨ましいよ」
洋介「あれっ? 俊樹、理子の事好きじゃないの?」
俊樹「ち、ちげーし」
洋介「俺、てっきりお前は理子の事が好きなんだと思ってた」
哲司「俊樹、お前が告白しないんだったら、俺が先にするぜ」
俊樹「えっ?」
洋介「何?? 哲司も理子が好きだったの?」
理子「私が何だって?」
 
 いつの間に戻ったのか、理子が教室のドアの所に立っている。

哲司「お前、サボってんじゃねーよ」
理子「ごめん」
俊樹「行って来たのか?」
理子「うん。でも、今日は居なかった」
俊樹「そう」
理子「さて、それじゃ、私あっちの飾りつけして来るね」
俊樹「おお」
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