美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~

俺様の本領発揮

「瑠花、ここでは込み入った話ができない。場所を移そう」

朔也はバーテンを呼び出しカードで支払いを済まると、胸に抱いていた泣き顔の瑠花をそっと離した。

「でも、もう遅いし・・・。部長も飲んでいるから車の運転はできないでしょう?ここで解散した方が・・・」

「瑠花を泣かせただけで肝心の理由を何も聞いていない。幸い明日は祝日だ。多少遅くなっても問題ないだろう?それに俺は酔っていないんだ。ずっとノンアルコールを飲んでいたしな」

「えっ?そんな・・・私ばっかりワインとお酒を満喫してたなんてごめんなさい」

こんな好機に酔ってなどいられるものか!というのが朔也の本音だった。

だからこそ、瑠花に気づかれないように本物に限りなく似せたフェイクのノンアルコールワインとカクテルを注文していたのだ。

朔也が瑠花に言い寄った理由を゛酒に酔っていた一時の気の迷い゛などと揶揄されてはかなわない。

幸い、瑠花の場合は自称゛酒に強い女゛なので、何かあっても自己責任で言い逃れはしないだろうし、させないつもりだ。

「責任もって瑠花の事は(明日以降に)送るよ。だから静かに話ができるところに移動しよう。立てるか?」

俺様モードからのデレ甘モードが効果的なのは、ここ数日の瑠花の様子で実証済みだ。

朔也の言葉に躊躇いなく頷く瑠花は、その浅はかな行動に気づけずにいるくらいには酔っぱらっていたのだろう。

瑠花は朔也に支えられるまま、ふらつく足と揺らめく視界にうっとりと酔いながら朔也の促す方へ足取りを進めていった。

もう逃がさない・・・。
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