美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「えっ、この子がマナちゃんですか・・・?」

「ああ、可愛いだろう。俺たちとお揃いだ」

朔也が胸に抱いていたのは、

マンチカンのメス猫、マナちゃんだった。

ブラウンがかった黒い毛に、尖った耳。

つぶらな瞳は瑠花と同じ、ブルーグレイとヘーゼル色のオッドアイだった・・・。

「こいつと出会ったのは半年前だ。月齢は確か、8ヶ月くらいだったかな」

「ニャー」

朔也の裸の胸に抱かれるマナは、抱いてほしそうに瑠花に前足を伸ばしてきた。

愛らしい動作に思わず瑠花の顔も綻ぶ。

しかし、このままマナを引き取ってしまうと、朔也のあらぬ部分が丸見えになってしまうのではないか。

瑠花は真っ赤になりながら顔を背け、

「さ、朔也さんはとにかく服を着てください」

と照れながら言った。

「なんだ、散々見たくせに今更だろ?まあ、可愛いから許す」

朔也はそう言って笑いながら、床に落ちた衣類を拾い上げて身に付けた。

そうして、二人と一匹、リビングのソファに移動してくつろぐ。

瑠花がマナの頭を撫でて癒されている間に、朔也はバニラの香りがついたフレーバーコーヒーをいれてくれた。

「マナちゃんて可愛い名前ですね。元カノの名前ですか?」

ほんの少しのやきもちと好奇心で尋ねた瑠花に返ってきた返事は

「そうだな」

という、尋ねた自分自身を傷つけるものだった。

「えっ・・・あ・・・」

動揺する瑠花の隣で、朔也は笑って瑠花の頭を撫でた。

「マナは愛って書くんだ。英語でラブ」

瑠花はその言葉の意味に思い当たって顔を真っ赤にしてうつむいた。

ラブは、瑠花の母と祖父が彼女を呼ぶ愛称。

朔也のお姫様の残した唯一の手掛かり。

そんな朔也の熱い想いを感じ取って、瑠花は満面の笑顔を隠すためにマナの背中に顔を埋めた。

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