美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
穂積ソワンデシュヴCo.ltdはヘアケア製品を製造、販売する会社。

もちろん男性のヘアケア製品や育毛剤なども扱っているが、女性用の商品に比べると知名度は低い。

朔也が穂積ソワンデシュヴの御曹司であることを知っている中学、高校時代の友人からは、

『ロボットとか開発してそうな理系脳の偏屈穂積が、シャンプー、リンスとか可愛らしいもんを売ってもそんなには売れないだろうな』

とか、

『ヘアケア商品なんてどれも同じだろ?時計や車と違ってプレミア感がないよな』

などと家業を馬鹿に・・・いや、からかわれ続けたこともあり、朔也はあまりこの仕事につくことを快く思っていなかった。

しかし、成績優秀で、素行も真面目な朔也に期待する親戚や会社の上役も多く、周囲から寄せられる重圧は正直負担だった。

やりたいことをやりたいと言って反旗を翻すほどのパワーも意欲もない朔也は、ただマンジリと穂積堂でバイトをこなす日々。

゛こんな小さなショップでバイトしていったい会社の何が理解できるというのか・・・゛

朔也は、完全に販売店を下に見ており、

ただ周りに流されるままにノルマをこなす世捨人のような状態だった。

そんな中、開催されたのが、消費者向けのヘアケア教室。

朔也はあくまでただのバイト生。

そのため、ヘアケア教室を開催するからといって何か特別な仕事を任されることもなく、

『お客様と一緒に教室に参加してみて意見をくれないかな?若い男性の意見は貴重だから』

と言われて、内心嫌々ながらも店長の指示に従うことになった。
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