美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「その成分の材料を準備したのは誰だろうな?」

地獄の底から吐き出されたような低音ボイスに、瑠花は反論することを諦めて、

「・・・部長です」

と答えるに留めた。

「その過程を含めた上で、使用感を確かめるのは誰か自ずと答えは出るだろう?」

ツカツカと瑠花に近づいていく朔也に、雅樹は笑って肩を竦めた。

だが、瑠花は笑えない。

「お好きにどうぞ・・・。このようにキューティクルも髪全体の艶も問題ありません。香りも、きつすぎず甘すぎず適度に薫るものになったと自負しています」

「・・・確かに。香りも手触りも素晴らしい。思わず触りたくなる仕上がりだ・・・」

゛ち、近い゛

瑠花に接近してくる朔也の距離は限りなくゼロに近づこうとしている。

距離を取ろうと後ずさる瑠花の後頭部に手をやると、朔也は鼻を瑠花の頭頂部に近づけ、クンクンと匂いを嗅ぎながらナデナデと髪を撫でた。

遠くから見れば、二人は抱き合っているようにしか見えないに違いない。

「君は天才だな・・・」

うっとりと呟く朔也の声が耳をかすめてくすぐったくて、瑠花の頭に警鐘が鳴る。

思わず突き飛ばそうかと身構えた瞬間に

「こら、朔也、調子に乗るな。離れろ。公私混同は許さないぞ」

と、雅樹が朔也と瑠花の間に割り込んできて朔也の頭を叩いてくれたのでホッとした。

「俺でもそこまでは接近はしないぞ?セクハラで訴えられたくなかったら、お前こそ少しは自重するんだな」

呆れた声の雅樹に、朔也は口角をわずかに上げて

「自分の用意した原材料がどれ程の効果をもたらしたのか確認する責任が俺にはある。そうだな?三神主任?」

瑠花からゆっくりと離れ、髪に寄せていた手を名残惜しげに下ろすと、朔也は瑠花に向き合って諭すように言った。

゛確かめ方に問題があるんだよ゛

と瑠花は思ったが、いちいち責め立てるのも面倒くさい。

そんなことよりも、一刻も早くこの成果を上役の皆様に認めてほしい、と言うのが本音だ。
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