美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「これはこれは心晴さん、こんなところにいらしたのですね」

瑠花がコーヒーを二杯、研究室横の個室に運び終えたとき、意地が悪く少し甲高い男性の声がした。

゛こんなところとは失礼な゛

瑠花はムッとしたまま拳を握ったが、声の主は顔を見なくてもわかる。

爬虫類系陰湿上司、但馬課長だった。

但馬はクレーム対策部に異動になる前も、何かにつけて瑠花の研究室を訪れては、チクチクと言いがかりをつけ文句を言ってきた。

商品開発がうまくいってもいかなくても、嫌みの一つや二つを残して去っていく。

但馬が他部署へ異動となりようやく接点がなくなったと喜んでいたのに、今度は、これまでに開発した商品に遡ってまでクレームを言ってくるようになったから始末に負えない。

しかし、今日はお気に入りの心晴がいることに満足したのか、少しは機嫌が良く見えた。

「あら、但馬課長じゃありませんか。お久しぶりですね。父とご一緒ではなかったのですか?」

父親の側近である但馬に、心晴がそう尋ねるのは無理もない。

「狭間部長は先程、穂積部長のところに向かわれました。心晴さんに関することで何か話があるとか・・・」

「また・・・?いい加減私情を挟むのはやめてほしいんだけど」

小春に関することで私情を挟むこととなればおそらく二人の結婚に関わることに違いない。

瑠花はこのまま話を聞いていていいものか、と躊躇したが、ここは自分に与えられている部屋であって、お客様はあちらの方だ。

何もこちらが気を使う必要はないのだと開き直ることにした。

しかし、但馬にだけ何のお構いもしないのは気が引けたので、瑠花は自分の分として用意したコーヒーを但馬に出すと、自分も空いている椅子に腰かけて様子を伺うことにした。
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