美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「で、但馬課長はこちらになんのご用?クレームのことならまずは穂積部長か橋沼課長を通すべきではないのかしら?」

悪びれずに尋ねる心晴の言葉に

「いえ、三神主任が自分の立場をわきまえず、穂積部長とバディを組んで新商品のデザインを手掛けることになったと耳にしましてね。このままでは心晴さんを傷つけてしまう結果になりはしまいか、と思い、一言物申さねばと思ってわざわざ時間を割いてここまで来たという次第です」

と、但馬がどや顔で言った。

「新商品のデザインを?・・・へえ、穂積くんがねえ・・・」

心晴の笑顔が、一瞬固まったように見えた。

決してその事実を彼女に隠していた訳ではないのだが、心晴を勘違いさせたのではないか・・・そんな瑠花の不安をよそに、心晴はすぐに笑顔に戻って

「私は三神主任が今回の新商品発売の全行程に関わることには大賛成よ。研究者だからってデザインや広告が苦手とは限らないもの。但馬課長、苦言を呈するなんてもっての他ですよ?」

と、言った。

「そうですか・・・。しかし、私は三神主任が表に出過ぎることには関心しません。何せ穂積部長は将来、わが社を背負って立つリーダーの一人。そんな人に、三神主任のような一社員が・・・」

「はいはい、もう、わかりましたから。・・・あら、もうこんな時間?そろそろ三神主任を解放してあげなくては。ほらほら、但馬課長も大事な仕事が残っているはずでしょ?」

とにもかくにも攻撃の矛先を瑠花に向けようとする但馬を、心晴がなんとかこの場から追い出そうと画策してくれた。

「私はまだ、三神主任にお話が・・・」

「だめです。行きますよ!・・・それでは、三神主任、またね」

そうやってしつこい害虫を駆逐してくれた心晴は、やはり女神で天使だ。

瑠花は心の底から感謝・感激し、心晴の恋を応援しようと心に誓った。
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