初恋エモ





「美透ちゃん、おじゃましていい?」


昼休み。一人でお弁当を開けると、扉からミハラさんが顔を出した。


ちなみに昨日は翠さんが来てくれた。

彼女は美容系の専門学校に行くために頑張っているとのこと。


ミハラさんは隣の席に腰をかけ、空っぽの机や椅子を見渡す。


「なんか、不思議な感じするね」

「あはは、私はもう慣れました」


この並びの教室には誰もいないため、廊下も静まりかえっている。

昼休みなのに、上の階からのざわざわ声がかすかに聞こえるだけ。


ミハラさんはパンを食べた後、おにぎりの袋を開けた。

私は小さなお弁当に入ったごはんを一口食べた。


「勉強、どうですか?」

「大変だよ。必死に遅れを取り戻している感じ」


食べながら、彼の近況を聞いたり、課題プリントで分からないところを教えてもらったり、いろいろな話をした。


二人きりの教室。隣同士という近い距離。

こんなドキドキなシチュエーションの中で、今私は彼のイケメン笑顔を独り占めしている状態。


仲良く会話をして、一緒にお昼ご飯を食べて。

もし私がミハラさんと同じ学年だったら、こういう日々を送れたのかな。


……いや無理でしょ。私では彼に釣り合わないって!


なんて、ミハラさんとの甘い青春を妄想していると。


「うわっ!」


彼にじっと見つめられ、驚きのあまり目をカッと見開いてしまった。


ぷっと彼は吹き出し、「なに今の? 可愛い」とつぶやく。


可愛くない可愛くない! そう反論しつつも胸がキューンとした。

相変わらずミハラさんの言葉は凶器だ。

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