初恋エモ

3






この前の初ライブは評判がよく、対バンからも声をかけられ、ライブも続々決まった。

次へいかすために、ライブ映像をクノさんの家で二人でチェックすることに。


「お前、ここ音抜けてる」

「う、バレてましたか」


私のベースはミスがあったけれど、葉山さんの安定したドラムのおかげでそこまで気にはならなかった。

ただ、首は軽く振っているものの、完全に棒立ち状態。

もっと体全体でリズムをとった方がいいかも。

スタジオ練習の時から意識してみよう。


クノさんは相変わらずギターは上手いし、歌も突き抜けていて迫力がある。

そう思っていたが、彼は「俺もまだまだだな~。なんか固ぇなー」と反省している。


「十分すごいじゃないですか」

「今回は準備不足だし、次は全部オリジナル曲でやりてーな」

「次、1か月後ですよ?」

「曲はたくさんあんだよ。聴く?」


二人で一つのパソコン画面を見ている状態。

近い距離で目が合い、慌てて映像に視線を戻した。


「聴きたいです。どんな曲ですか?」

「んーちょっと今までとは違う感じの」


クノさんはパソコンを操作し、たくさんのギザギザが並ぶ画面を開いた。


再生をクリックすると、三拍子のギターサウンドが流れる。

今までの早い曲や激しい曲と違って、ひずんだギター音ながらも優しい雰囲気が漂っている。


胸がきゅーんとするような、そんなサウンドだった。

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