空~君は何者~
朝からファミレスのアルバイト。客から文句を言われ、店長からはあきれられ、1日くたくたに働き、仕事終わりにスーパーの半額になった惣菜を買う。そして、築42年のボロいアパートの6畳の小さな部屋に帰り、テレビを見ながら冷たくなった惣菜を食べて寝る。毎日この繰り返し。なんのために生きているのかなんて考えなかった。考えたくもなかった。小さい頃の夢だとか、なりたかった自分はもう思い出せない。
誰にも見えない。鏡にも映らなくなった僕は、この世界に存在あるものなのだろうか。いや、僕は最初から存在していたのだろうか。
「大丈夫ですよ。最初から存在してなかったのですから。」
医者はニッコと微笑んだ。そして、握っていたビニールの袋口をパッと離した。