蛍火に揺れる
確かにあの妊娠中の時間は、人生の休暇だったなぁとしみじみ感じている最中である。

「まぁ、夜の二時、三時ぐらいまでだったらノリ君がミルク作って対応してくれるから、まだ休めている方なの、かなぁ…?」

ノリ君も慣れないながらも頑張ってくれていて…特に夜中のしんどい時はいつも交代してくれるから、随分と楽になっていると思う。


ハルさんは「うち夫が夜泣きで起きたことないから羨ましい」と。

「でもそろそろ哺乳瓶拒否が始まるかもだから気を付けなー」と有り難い?助言者をいただいたので、少し恐怖である。


そうしている間にも料理が運ばれてきたので、蛍をクーハンに寝かせて三人で食事。来る前にたっぷり授乳したおかげか、寝かせるとすぐに寝てくれたので随分と助かる。

あっさりとした薄味の懐石料理は、体だけではなく心にも染みるほど優しい味だ。ほろほろと口の中で崩れる西京焼きの味を噛み締めては、思わずため息が漏れる。

「いいねぇ…ちゃんとした料理って……」
思わずそう呟くと「わかるわー」とハルさん。
< 147 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop