かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 彼が、唇を離した途端に口にした。
「俺のファーストキス。柚実に食べられてよかった」
 なんて嬉しいことを言うのだろう。
 普通、女の子が言う科白じゃないのか。
 と、も、思ったけれど。
 そんな素直な純が愛おしくて。
 私は自ら、彼に抱きしめていたのだ。
「な……」
 彼は突然の私の行動に一瞬怯んだものの、すぐに黙った。 
 そして、だくだくと涙を流し始めた。
 私の胸を、濡らすほどに。
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