かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
  彼もふんわりと応えてくれる。
「キス……してもいいか」
 思いもよらない科白が飛んできた。
「あ、あの……えと……」
 私は動揺して、自分でも顔が真っ赤になってしまうのを感じる。
「どうせ、初めてじゃ、ないだろう」
 瞬とのそれは、経験済みだ。むしろ、それ以上のことも……。
 けれど、私はどきどしてた。
 全身が心臓になったみたいに、どくどくと脈を打つ。
 私が慌てているうちに、純は目を瞑り、顔を寄せてくる。
 私も自然と、目を閉じていた。
 ――初めて触れる。唇と唇。
 彼の唇は湿っていて、歌う時の喉の潤いが唇にまできているのか、と口づけされながらも思っていた。
「ファーストキス」
「……へ」
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