かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 本格的な悩みなのだろうと、私はぶくぶくを止めた。 
 目の前に純がいる。
 目にかかりそうな長い黒い前髪。
 伏せている目から軒のように下がっている長い睫毛。
 病弱なほど白い肌。
 形の良い、すっと通った鼻筋。
 こうやって、テーブル越しに向き合うのも初めてに近い。
 隣を歩くのはよくあったけれど。
 純って、愛想はないけれど、どこかひとを惹きつけるものがある。
 圭吾先輩と瞬が引退して、なくなってしまったバンド“TRUTH”。
 純がメインボーカルで、人気があったのも解る。
 歌も曲もいいのはもちろんだけど、純のこの容姿も、女の子たちが惹かれた一因だろう。
 そんな純の傍にいられる。
 幸せ。
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