かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 それだけで、充分だった。
 彼の歌を彩るのは、ただそれだけで。
 一曲目が終わると、どうもありがとう、と、晴也さんは片手を挙げた。
「今回も、こんなにもお客さんが見に来てくれて、ありがたいです」
 こんなにも――?
 私は、ひっかかりを覚えた。
 純たちの軽音バンドの方が、体育館を埋め尽くすくらい、ずっと観客はひしめいていた。
 片やこちらはプロなのに、30人にも満たない観客。
 仮にも紅白にまで出たバンドの、ボーカルのライブなのに。
 どうしてここまで――。
 私は疑念を抱かずにはいられなかった。
< 77 / 400 >

この作品をシェア

pagetop