かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
「どうぞどうぞ、ステージへ」
 晴也さんは、そんな女のひとを迎え入れる。
 一緒に歌った曲は、“ロンリーチャップリン”
 私は知らなかった歌だった。
 そして女のひとの声が聞こえなかった。
 マイクの不調かな、そう思ったけれど。
 晴也さんは。まるでかばうかのようににこにこと、歌い上げる女のひとを見ながらハモってくれる。
 ハモりの声ばかりで、肝心のメロディの歌い声は聞こえなかった。
「ありがとう。じゃあ、リクエストのコーナーももうお終いかな。最後、高橋晴也とセッションしたいひと!」
 隣にいる純は、こういうノリ、苦手なんだろうな、と思っていたのに。
 見れば、真っ直ぐに手を挙げていた。
< 81 / 400 >

この作品をシェア

pagetop