うるせえ、玉の輿。
六、訳ありお菓子詰め合わせ状態。


Side:津津村 丞爾

「俺はお前が嫌いなんだわ」

ここまで敵対されているのはなぜなのだろうか。
虹村社長の会社の副社長。起業したときからのパートナーと聞いていた。
俺のように肉体労働は似合わない、知的で軽薄そうだけど悪い人ではないと思っていたのに。

「あの、俺の何が気に食わないのか分からないですけど、じゃあわざわざ毎回見に来なくていいですけど」
「見に来てんじゃねえよ。社長がお前に手を出したら、会社がやべえから監視」
「……へえ」

会社のことを想う良い人なのかな。
そんなことを思っていたのだけど、いきなりファイルを見せられた。
「お前は、こんな仕事をしていい奴じゃねえよな」
「え……」
「お前の父親だよ、ファイル見ただろ」
「えーっと、英語だったから」

母が父親の話をしてくれないのは、これではっきりした。
外国人で、きっと行きずりの相手だったんだ。
教えたくても、何も知らなかった。なら、産んでくれただけ感謝だなって。

「お前、仕事終わったら俺とデートだ。いいな」
「嫌です、けど」
「断ったら、お前の会社をつぶしてやる。いいな」

半ば脅迫のようなデートに誘われ、困惑しつつも、父のことを教えてくれると言うので渋々ついていった。
まさかこの年になって『知らない人についていってはいけない』という言葉を思い出すとは思わなかった。

連れていかれたBARで、おもちゃだと見せられた注射を、腕にぶっ刺されるとは思ってもないかったのだから。
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