うるせえ、玉の輿。


狼に食べられた赤ずきんを、狼のお腹から取り出した狩人は、代わりに小石をお腹に詰め込みました。

動けなくするために?
だったらお腹を開けたままにすればいいと思うはず。

恋し赤ずきんを食べようとした狼が憎くて?
真相は分からない。けれど私は、業平が襲われていたら、あいつの欲望をハサミで切っていたであろう。

恋し赤ずきんのために、ああ、小石を、ってギャグかな。

吊り橋効果のように、スイッチがカチッて押され。
いや、スイッチが間違って押されてしまった。

「麻琴ちゃん」

業平の声に恋情が甘い吐息に交じるよう。
私を呼ぶ声が、変わる。

「玉の輿は諦めてもいい?」
もし狼に小石を詰め込まなかったら、スイッチは間違えて幼かったのに。


私は小さく、玉の輿には乗りたいと呪文を唱えた。
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