彼女は実は男で溺愛で

「君は、染谷の下に付く点に不満は」

 突然、意見を求められ、戸惑う。
 周りもざわついたのが分かった。

 緊張から震える唇で答える。

「私は、まだ入社して間もないので。不満もなにも。与えられた仕事を、精一杯やらせていただきます」

「そうか、承知した。では、今日の打ち合わせはここまでとしよう」

 私の回答で満足したのかは分からないけれど、彼の鋭い視線から解放され息をつく。

 彼は一番に会議室を出て行って、これ以上話しかけられる心配もなくなり、肩の力が抜けた。

 彼の一挙手一投足で、死にかける人が出るんだから、軽はずみな行動は差し控えてもらいたい。
 先ほどの光景を女性社員に見られていたら、ひとたまりもない。

 上役の多い会議には、私以外の女性社員はいなかったのは、不幸中の幸いだ。
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