彼女は実は男で溺愛で

 手を離し、彼は笑う。

「ハハ。そうだね。でも、少しは俺を男として意識してくれたんじゃない?」

 悪戯っぽく言う彼に、私は不平を訴える。

「からかわないでください」

「からかっていないよ。本当に、キスしたい」

 再び向けられる、真っ直ぐな視線から逃れるように目を逸らす。
 逸らしても、見られているのを感じて顔が熱い。

「本当、可愛い。だから俺がいない時に、隣のビルには近づかないと約束して」

「隣のビルに、行くだけでダメなんですか」

「隣のビルの使われていない会議室に、あいつは女を呼び出したりしているから。まさか鉢合わせるとは思わなくて、考えが甘かったよ。もう、昨日みたいな目に遭わせたくない」

 私も龍臣さんの視界に入る自体、懲り懲りだ。

「それから不用意に飲み会や、立食パーティーにも参加しないって約束して」

「私、あんまり飲めないですし」

「それなら尚更だよ」
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