彼女は実は男で溺愛で

 朝、目が覚めるといい匂いがして、パンが焼かれていた。
 ベーコンエッグと、サラダにコーヒーという絵に描いた朝食。

「嫌だ。私、寝坊して」

 私に歩み寄った彼は、微笑みを浮かべる。

「まだ平気だよ。おはよ」

 チュッと頬にキスをする彼は、朝から甘い。

「服を貸せるといいのだけれど、サイズがね。朝食を食べるのは整えてからでいいよ」

 彼の指摘に自分の姿を顧みて「キャッ」と悲鳴を上げる。
 ブラウスとスカートが着崩れて、あられもない姿になっていた。

「悩殺したかったのなら、俺は歓迎だよ」

「やっ、お見苦しいものを。すみませんでした!」

 慌てて寝室に戻り、服を整える。
 自分の着てきた服をそのまま着て寝たのに、どうしてこうなるんだろう。
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