彼女は実は男で溺愛で

 悪戯に触れられ、怒りたかったのに、その思いは萎んでいく。

「悠里さん?」

「ん?」

 私は体を起こし、彼の手に自分の手を重ねた。

「私、悠里さんが、好きです」

 彼は目を見開いて、私を見つめる。

「だから、ゆっくり私たちらしくお付き合いしていきましょう」

 彼は私の体に腕を回し、引き寄せた。

「そうだね。ごめん。少し焦っていたのかもしれない」

 顔を覗き込み、彼は優しい触れるだけのキスをした。

「さっきの『悠里さん』は、俺が呼ばれている感じがした。ありがとう」

 彼は悠里さんであって、悠里さんではなくて。
 そのことに、彼は葛藤しているようだった。

「俺も風呂に入ってくるよ。寝てていいからね」

 おでこにキスをして、彼は部屋を出て行った。
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