彼女は実は男で溺愛で

 アパートに戻ると、玄関の扉を入った振り向きざまにキスをされた。

「染谷、さん?」

「もう一度、悠里って呼ばれたいな」

 甘い顔をさせ、唇を重ねる。

「んっ。悠里、さん」

「うん。おいで」

 ソファまで移動すると、彼は頬を撫で目を伏せた。

「村岡さんと平林さんの件は、2人に任せたらいいと思う」

「え」

 驚いて悠里さんを見上げると、彼は私の手を取り、指先にキスをして言った。

「史ちゃんは他の人の心配までするから、俺は史ちゃんが心配になる」

「でも」

「誰かが誰かを好きになるのは、誰にも止められない。部外者がなにか言ったところで、仕方ないよ」

「それは、そうですけれど」
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