彼女は実は男で溺愛で
近づいて声をかけるべきなのに、躊躇していると、私に気付いた彼は顔を上げ、表情を緩ませた。
わあ。私、悠里さんがすごく好きだ。
足元から湧き上がる想いに、体がふわふわする。
ぼんやりしていた私の元に、悠里さんはコーヒーショップから出て歩み寄った。
「どうしたの。ぼんやりして」
不思議そうな顔をする彼に、私は「好き、だなあと思っていました」と胸の内を伝える。
悠里さんは声を上擦らせ「参ったな」と、顔に手を当てた。
それから私の手に自身の手を重ねると「浮かれる」と言いながら、歩き出した。
電車に乗ると混雑している車内で、私は悠里さんに包まれるように抱きしめられた。
窮屈な電車のはずなのに、幸せにすら思ってしまう。