彼女は実は男で溺愛で

 悠里さんは手を顔に当て、バツが悪そうな表情を浮かべて言った。

「ひどく激しくしそうで、我慢、している顔、かも」

 カァーッと顔から、全身が火を吹いたように熱くなる。

「その、我慢しないで、ください」

 抱き寄せられ、戸惑いの声が漏れる。

「あの」

「史ちゃんに、女の子に、こんなこと言わせるなんて、ダメな男だね」

「そんなっ」

「元々、男か女かわからないような奴だったしね」

 私は力一杯、頭を左右に振るう。

「ひとつ聞いてもいい?」

「はい」

「どうして女の人でいてって」

「それは……」

「龍臣の愚行で箍が外れてしまったけれど、女の人でいてって言ったのに、触れてくるから驚いた」
< 309 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop