彼女は実は男で溺愛で

「違う。そうじゃないんだ。龍臣の行為を毛嫌いしているはずなのに、俺も同じじゃないのかって思うと、どうしても」

 言葉を詰まらせる悠里さんに、私は力強く否定する。

「そんな、彼と悠里さんとは全然違います」

「そんなことないよ」

 悠里さんは力なく言う。

「前に、襲われかけた話をしたよね」

「え、あ、はい」

 男性にも女性にも、襲われかけた経験のある悠里さん。

 龍臣さんにしてみれば、先ほどの私への行為はからかっただけだろう。

 悠里さんはきっと、もっとひどい経験をしていると思う。

「正直に言うと浴室で突然触られた時、その時の記憶が蘇るかと思った」

「ごめっ、ごめんなさい」

「ううん。それなのに、俺は龍臣の行為を見てしまって、怯えていた史ちゃんに同じ行為をしている」

「それは……」

「その罪悪感が拭えないのかな。だから最後まで、その、出来ないんだ」

「それで困ったような、切なそうな顔をされているんですね」

「え」
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