彼女は実は男で溺愛で

 私は思い切って、彼に質問した。

「どうして里穂さんは、悠里さんが、その、初めてって知っていたんですか」

「ああ。あれはカマかけられたんだよ。「本当にそうだったんだ〜」って後で笑われた」

 なんだ。当てずっぽうだったんだ。
 でも。

「里穂さんから聞いてしまったんです。悠里さんに迫ったことがあるって」

「あー」と、悠里さんは気まずそうな声を出して、なにかを考えているような素振りを見せた。
 私は胸が痛くなりながらも、彼からの続きを待った。

「一度、「私が付き合ってあげるわよ」って言われて、押し倒された」

 やっぱり、本当だったんだ。

 彼は尚も続けた。

「それで、まさぐられて「反応なしかよ!」って、笑われた」

 彼はハハと乾いた声を上げた。

「情けない武勇伝?」

「そんなこと」

「里穂はからかっただけで」

「そう、ですか」

 からかったのかな。
 本当に好きだったんじゃないのかな。

 もやもやするけれど、それを言っても仕方がない。
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