彼女は実は男で溺愛で

「本気で襲おうとした人とは、明らかに違ったよ」

 暗い声で告げる彼の体に、腕を回す。

「ごめんなさい。思い出させるような」

「いや。うん」

 彼は少し言葉を選ぶようにして、私に質問をした。

「史ちゃんこそ、龍臣に惹かれた?」

「は」

「いや、うん。そんなわけないとは思うのだけれど」

「はい。どこがどうなったら、そうなるのか不思議です」

「話したって聞いたから」

 あの人と話すと、そんなにすぐに噂が回るわけ?
 恐ろしくなって、身震いをする。

「だ、誰に聞いたんですか?」

「龍臣が」

 ああ、なんだ。
 少しだけ安堵すると、悠里さんは龍臣さんと話した内容を私に告げる。
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