彼女は実は男で溺愛で

「俺、本当の名前は西園悠里なんだよ」

「え」

 私が驚くのは想定内なのか、彼は私に頷いてみせた。

「祖父は西園玄 (にしぞのげん)。今の西園グループのトップだ」

「え、あの」

 突然、里穂さんが言っていた言葉が蘇る。
 あまりにも色々と買ってもらい過ぎて、私が下着を自分で買うと言い張っていた時の言葉。

「あのさ、変に断る方が失礼なんじゃない? 悠里にしてみれば、大した額じゃないんだから」

 悠里さんが、お金持ちなイメージなんだなあと、不思議に思っていると、彼女が続けた。

「そっか。知らないのか。そのうち話してくれるって」

 この、そのうち話してくれるというのが、この話だというの?

 彼は、黙っている私に話し続けた。
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