彼女は実は男で溺愛で

「あの、どうして私なんですか、の答えになっていますか?」

「ああ、ごめん。そうだったね」

 彼が改めて話す言葉を、緊張した面持ちで待った。

「俺の人生を変えた女の子が、少女から大人へ変貌を遂げようとしていて。その過程を見ていたら、いつの間にか、かな」

「な、なんだか哲学的ですね」

「そうかな。頑張り屋なところとか、そういうところにグッときたんだよ。自分よりも人の心配ばかりするところとか」

 からかっているとは思えない口調の彼が、少しだけ表情を崩して言った。

「ま、俺はあのぽちゃっとした史ちゃんのままでも、恋に落ちた自信はあるけれどね」

「う、嘘ばっかり」

「抱き心地よさそうだよ。全身がぽちゃぽちゃで」

「もう! 悠里さん!」

 ハハハッと笑う悠里さんは楽しげだ。

 あれ。私、世界が違うからって振られる流れだったのでは?
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