彼女は実は男で溺愛で

「そうだね。悩んでさえいたのにね。たぶん史ちゃんが、真っ直ぐに言ってくれたからだと思う。からかうわけでもなく、侮辱するわけでもなく、ただ単純に俺を『綺麗』と言ってくれたから」

 悠里さんは手を伸ばし、私に愛おしそうに触れる。

「本当に嬉しかったんだ。ありがとう」

 私はどう答えたらいいのかわからなくて、「そんな、私はなにも」としか言えない。

「それで、あの頃から好きでしたってなれば綺麗なお話だけれど、そこまで意識はしていなくて。実際に好きになったのは、再会してから」

「え、でも」

「ん? どこか質問がある?」

「どこから聞けばいいのか、わからないくらい、たくさん」

「いいよ。ゆっくり、整理して」

 頭がパニックになって、たぶん回線はショートしている。
< 338 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop