彼女は実は男で溺愛で

 そのままその日は眠りにつき、翌朝、彼のアパートから出ると、電車に乗る前にカフェに寄った。

 ひとりで考えたくて、敢えて悠里さんを誘わなかった。

 カフェでぼんやりしていると、「ここ、いいか」と声を掛けられた。

「え」

 顔を上げると、天敵とも言える人物。

「西園龍臣」

 思わずこぼれた心の声に、目の前の彼は眉をひそめた。

「上司をフルネームで呼び捨てとは、いい度胸だな」

「ひっ。すみません」

 プライベートの彼を見かけるのはもちろん初めてで、私服姿を目にするのも初めてだ。

 がたいのいい体格が、ただの白いTシャツをお洒落に見せている。
 着飾っているわけではないのに、人目を惹く雰囲気があった。
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