彼女は実は男で溺愛で

 悠里さんが私に向かって片手を上げたのを見て、ホッと息をついて歩み寄る。

「お仕事、ですか」

「ええ、まあ、ね」

「怖い、人、でしたね」

 悠里さんの同僚の方に失礼かなとも思ったけれど、恐怖心から解放された安堵で本音をこぼした。

 目を丸くした悠里さんが、驚くべき事実を告げる。

「珍しい。知らないのね。今の彼、西園龍臣(にしぞのたつおみ)。西園グループの後継者候補の中でも有力候補よ」

 そうか。西園グループの人だから。
 オーラがすごいのも肯ける。

 納得した私は、続けられた悠里さんの言葉に慄いた。

「彼、経営管理本部の本部長よ。総務課って、経営管理本部の所属よね?」

 まさかの強面の男性が、直属の上司だなんて。
 驚きの事実を知っても、きっと偉い人だろうから私には関わりがない人だろうと、深く考えなかった。
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