彼女は実は男で溺愛で
ボディメイク室に着き、中に入りながら、悠里さんが褒めてくれる。
「そうそう。里穂に聞いたよ。毎日休まず来てるんだってね。偉い。偉い」
「へへへ」と、はにかんでいると里穂さんが、ぬうっと顔を出す。
「まったく史乃ちゃんは、すっかり悠里に懐いて。私と会った時と、声のトーンが違うぞ。半音上がってる」
里穂さんにからかわれ、頬を赤らめる。
「だって、悠里さんは憧れのお姉さんという感じで、会えると嬉しくて」
「なによ。じゃ私は近所のオバちゃん?」
「おお、イメージぴっ、いえ、近所のお姉さまです」
「今、ぴったりって言おうとしたでしょ!」
里穂さんと戯れ合っていると、クスクスと悠里さんが笑う。
好きだなあ。この穏やかな時間。
「さ! 今日も、ギュギューッと絞ってあげるからね」
試着室に向かいながら、里穂さんは腕まくりをする真似をしている。
試着室に入る前に悠里さんと目が合って、ドキンとした。
心臓が跳ねたのは、性別を越えて悠里さんにときめくから、というのも多分にあるけれど。
本当の理由は、この後の自分のせいだ。