彼女は実は男で溺愛で
戸惑って立ち止まっても

 仕事が終わると、里穂さんのところに顔を出す。
 今日は下着の修理の相談で、なんとなく気が重い。

 悠里さんとの関係を聞いたせいというよりも、修理をお願いするのが気が重いのだ。

 ボディメイク室に顔を出すと、いつも通りはつらつとした里穂さんが出迎える。

「お疲れ〜。修理だなんて、まだ数日でしょ? 不良品だった?」

 不良品でしたと言ってしまいたいけれど、それは良心が咎めて言えない。

「無理に、脱いでしまって」

 龍臣さんに襲われたというか、からかわれた日。
 自分を見失っていた悠里さんに乱暴に脱がされて、ロングブラのホックが数個ダメになっていたのだ。

 ガードルは素晴らしい収縮性のお陰で、どうにか難は免れたけれど、ホックは曲がったり、ホックごと生地が破れている箇所がある。

「あら〜。これは悠里が無理したんでしょ。ガツガツする面もあるなんて意外だな」

 ああ、やっぱりそっち系に想像してしまうよね。
 否定したところで、顔が赤くなってしまう私では「そうです」と言っているようなものだ。

 だから、来たくなかったけれど、そうもいかなくて。
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