彼女は実は男で溺愛で

「そうそう。市村さんは、どこの席に座る?」

「え」

「染谷くんの隣の方がいいのかしら」

 急に、染谷さんの話をされ戸惑う。

 染谷さんの隣って、だって、それって。
 今朝の悠里さんの言葉と重なって、脳内はパニックを起こす。

 彼の声で『結婚』『プロポーズ』というワードが思い出され、顔が熱くなっていくのがわかる。

「えっ。えっ。もしかして、史乃も結婚?」

「ないないないない」

「結婚しようとでも、言われたんでしょう」

 サラリと爆弾を落とす村岡さんが、恨めしい。

「違っ」

 そう言ってみても、2人の間では確定してしまって「染谷くん、草食かと思っていたのにね〜」と、話は進んでいる。

 私は2人が盛り上がって話している側で顔を赤くしながら、黙々とコンビニ弁当を食べ続けるしかなかった。
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