彼女は実は男で溺愛で

 って、今はそれよりも、彼は私が制服を着ていた数週間を知るはずもないわけで。
 悠里さんにも「職場では制服を着ていて」と話した覚えもない。

「何度か社内で、すれ違っているからね」

 種明かしをされ、絶句する。

 こっちの正体は隠しようがない。
 隠すつもりもなかったけれど。
 でも彼の存在は、私には分かりようがない。

 悠里さんに会えるかも。と、思って探していた人は女性なのだから。
 目を伏せて話す彼の仕草は男性的で、少しも女性らしさを感じない。

 見つけられるわけがない。
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