彼女は実は男で溺愛で
打ち合わせで染谷さんから頼まれた仕事をしていると、あっという間にお昼。
お弁当を持ち、打ち合わせテーブルに足を運ぶ。
「史乃。今日はなんだか元気そうね」
「え、あ、うん。そうかな」
イジメの件は解決したとは言い難い。
けれど、今の私は晴れ晴れしていた。
「今日も私服なんて珍しいね。もしかして……」
なにかを察した柚羽は、ガタンと音を立て、椅子を勢いよく引いて立ち上がった。
「私、抗議してくる!」
「いいよ。だって誰かわからないんだもの」
「そうだとしても、職場の中心で「誰よ! 史乃をイジメた奴! 出てきなさいよ!」って叫んでやるわよ」
すごい気迫に呆気に取られ、あははと声が漏れた。
「どうして笑っているの? イジメられて壊れちゃった?」
「ううん。ごめんね。私、昨日は柚羽のことも信じられなかった」
柚羽は目を見開いて、ストンと大人しく椅子に座り直した。