初恋してます。
その人がゆっくりと車椅子を押して、病院の屋上へと私を連れて行ってくれた。



どれぐらいぶりだろうか、私の頬に心地が良い温かい風が触れる。



久々に浴びる太陽の光に私は少し目を細めた。



病院の屋上には背の低い木々や色とりどりの鮮やかな季節の花々が沢山植えられていてまるで別世界のようだった。



外の新鮮な空気を両手をいっぱい伸ばしてたっぷりと何度も口から吸い込む。



その人の顔を見上げた先に、綺麗な虹がうっすら出ていた。



晴れ渡る青空に太陽が眩しく輝いているせいなのか、その人の双眸が綺麗な宝石のように見えた。



その人と目が合い軽く微笑み合った。



その人が側にいてくれることで、いつしか私は明日が来ることが怖くなくなっていた。



そう、その人の名前は秋山 蓮。



私がこんな気持ちを持つのは、きっと初めてなような気がして……──。



この人のことをこの先ずっと覚えていたいと思った。

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