Get over it.

私と龍生はお互いの偽りの姿を思い出の図書室に捨てた。


学校を出て、校門に向かう。

校門の外には、高級外車が横づけされていて、後部座席のドアを開ける
黒スーツを着た厳つい男の人。

龍生を見ると、「乗れ」と目が言っている。

その視線に頷きながら、最後に校舎を振り返る。


「・・バイバイ」


私が助手席に座ると、龍生も後に続き座席に座ると、ドアがバタンと音を
たてて閉まった。


車には、私と龍生、助手席にさっきの厳つい男の人、そして同じ黒スーツの
運転手さん。


「初めまして、玲さん。私は織田　司(オダ　ツカサ)と申します。
　日本最大組織　竜神会　大神組組長側近をしています。」

「ヤクザってことですか？」

「まあ、そうですね。そして、玲さんの隣に座っていらっしゃるお方が
　大神組組長の息子で若頭の大神　龍生(オオガミ　リュウセイ)様です。」

「エッ！龍生ってヤクザだったの！？」

「あぁ、どうする、ついて来るのやめるか？」

「辞めない！龍生がなんだろうと関係ない！」

龍生は、鼻でフッと笑うと織田さんに話の続きを促した。

「今向かっているのは、大神組の治める街です。先ずは、大神組本家に
　向かいます。そこで、組長と姐さんに会って頂きます。
　その先の話は、それが終わってからです。」

「それって、組長と姐さんに認められなければ続きはないという事かしら」

「そういう事です。」

「分かりました。」

私と織田さんの話が終わると、龍生が私の頭を自分の胸に抱き寄せた。

トクントクンと規則正しく聞こえる鼓動に、いつの間にか瞼が閉じていた。